先日、訪れた珈琲店。
そこは、銀座2丁目、住宅街にある小さなお店。
開店前から20人ほどが並び、待っている様子はただならぬ雰囲気でその後も次々の人が並んでいく。
確かに珈琲店なのだが、看板には盆栽の絵。
店先は小料理屋のようなしつらえで、興味をそそられ待ってみることにした。
木のサッシに、左官仕上げの土壁、和紙のメニュー表、間接照明に、カウンター奥には立派な盆栽。
見たところ、8割が外国人で日本的なコンセプトが受け入れられているのだと思った。
日本には茶道という文化がある。
外国人にとってはなかなかハードルが高いかもしれないが、珈琲文化の中に茶道の精神性が歩みよるとすれば、それは馴染みやすいかもしれない。
むしろ、その掛け合わせから何が生まれるかを想像してみることは、とても興味深いし、日本人の得意とする「調和」の精神そのものだと思った。
象徴的に置かれている盆栽。
盆栽は部屋に置ける小さな庭であり、小さな鉢の中で樹との調和を表現するものだ。
茶道において茶室は小宇宙であり、自然の縮図のようなもの。
小さなお店から茶室の心尽くしを連想し、戸をくぐった時にはすっかり茶室に招かれたような気持ちになっていた。
空間創りは客人へのもてなしの心。
目にみえるデザイン美しさの奥にある、見えない精神性。
いつもより背筋を伸ばしていただく珈琲は、スッと心にまっすぐ届くようで
凛とした緊張感の中からホッとして解放されるような気持ちになった。
私たちはたった1杯の珈琲でこんなにも満たされ、心安らぐことができる。
目の前の一杯をどんな空間で、どんな心持ちでいただくか、
意識と感性でその時間に心を尽くすことの贅沢さを学ばせていただいた。
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