児童文学作家、角野栄子さんのドキュメンタリー映画
『カラフルな魔女〜角野栄子の物語が生まれる暮らし〜』が先日公開された。
これは、NHKでも放映された番組を映画化したもので、
1日のほとんどを土日休みなく執筆活動をして暮らす角野さんのありのままの暮らしだ。
角野さんと言えば、最も有名なのが『魔女の宅急便』
1989年にスタジオジブリで映画化されたこの作品は、35年たった今でも色褪せない。
そんな角野さんは89歳になった今でも鎌倉で一人暮らしをしている。
食事は驚くほどたっぷりいただき、朝から夕方までほとんどがパソコンの前。
散歩に行けば行き先を決めずに迷ったら太陽を見ながら海の方へ歩いていくという。
夜は仕事をせず、けれど横になることはないそうだ。
それは、座って絵を描いているから。
頭に浮かんだアイデアを絵にして、それが次の本の土台になっていく。
年齢を重ねていくと色々な事が頭でわかるようになってくるけれど、
角野さんは、いつまでも自分で想像する楽しさを忘れない新鮮な心の眼を持っている。
たんぽぽを背中につけたカメの話や、自分の尻尾を見たことのないカバの話など、
それらは確かに子どもに向けてのものだけれど、
私たち大人が忙しくて見えなくなっている何かを思い起こさせられる場面だった。
こうは言い換えられないだろうか。
当たり前を疑ってみて、新しいものとの出会いを楽しむ。
有り得ない組み合わせは未知なるもので、希望への扉かもしれない、と。
魔法で奇跡を起こすことと同義ではないか、と。
映画の終わりに角野さん、ナレーションの宮崎あおいさん、宮川監督による舞台挨拶があった。
印象的だったのは、こうして映画になったことで「新しい扉を開いた感じ」とおっしゃっていたこと。
「幾つになっても扉って開くのね。」というコトバには、後に続く私たちへのエールのようにも聞こえた。
何か新しいことにチャレンジすることだけが新しい扉を開くことではない。
日常に溢れる見過ごしてしまっているものの中に宝が眠っていて、
それは私たちの想像力という力によって新しい扉の鍵となる。
仕事に於いても同じことが言えるのではないだろうか、
と有楽町からの帰り道、丸の内のオフィス群を見上げながらふと働くことに想いを馳せた。
映画『カラフルな魔女〜角野栄子の物語が生まれる暮らし〜』