先日、「仕立て屋のサーカス」という即興の舞台にボランティアとして参加した。
台本はなく、その場で生み出し、姿を変え、消えてゆくこの舞台は、音楽とパフォーマンスと光の演出によって構成されている。
次の展開が分からないからこそ瞬間に全てを捧げ、観客は固唾を飲んでそれを見守る。
そんな「今」に満ちた空間で、人々と共に呼吸し、ただそこに身を任せる心地よさを感じる舞台だった。
それは夢の中にいるような不思議な雰囲気で
考える暇もなく、ただ音や演者たちの動きに自分の感覚を委ねていく。
演者たちは、自分の中の余計なものを削ぎ落とし、純粋な器となって、瞬間のエネルギーを会場に放っていた。
完成されたものを見たのではない、何かが始まる源となるようなところから創造のプロセスを見せてもらったこの舞台は、
出来上がったものを消費することに慣れすぎている現代の生活に新たな視点を投げかけてくれるものだった。
開催の場所は東京駅からも程近く、東京国際フォーラム
ホールに立つとまるで、船のような景色とガラスの回廊が印象的な場所だ。
アトリウムを見上げると光が降り注ぎ、開放的で広々とした雰囲気はそこを歩く人々をそっと包み込み、ひとときの安らぎを与えてくれていた。
『仕立て屋のサーカス』
東京国際フォーラム